11月24日 研究と実践(その8)1990年2月「体育科教育」(大修館書店)「特集・体育の授業と教授技術」「ソフトボール(小学校)をどう教えるか」を執筆

 1992年度から小学校5・6年生の選択必修となるためか、教科書会社大手の一つである大修館書店から、原稿依頼が来ました。それは同社発行の「体育科教育」1990年2月号に「ソフトボール[小学校]・ボール運動[球技]をどう教えるか―技術指導を中心に。という題目で執筆をお願いしたいというのです。大修館書店では、私は「高校体育」の副教材「高校スポーツのソフトボール」を執筆、また、スポーツ・ビクトリー・シリーズ「ソフトボール」は単著、スポーツQ&Aシリーズ「実践ソフトボール」は共著等を出版させて頂いていたことによるからでした。

 体育科教育「ソフトボール」の「はじめに」では、次のことを書きました。「小学校高学年におけるソフトボール指導は、児童に『ソフトボールは楽しい』と言わせる授業にしなければならない。児童がソフトボールを楽しむためには、児童が頻繁にボールを捕り、投げ、打ち、走れる授業を展開することが大切である。そのためには、ソフトボールのどのボールを使用し、どんなルールに則って、ゲームを行うかを決定しなければならない。それによって練習の仕方も変わってくる。この選択を誤ると、一部の児童のみが楽しくプレーするソフトボールになり、多くのソフトボール嫌いの児童を生み出してしまう。そこでここでは、児童にソフトボール嫌いを出さないために、ソフトボールのゲームやルールを明らかにし、児童はどのようにソフトボールをプレーすれば良いかを記述する。」と。

 その後の内容は、Ⅰ.ソフトボールのゲームの特性、Ⅱ.ソフトボールのボールやルールの特性、Ⅲ.小学校高学年ではどのソフトボールか:①ファーストピッチの特徴、②スローピッチの特徴、Ⅳ.ボールの決定、Ⅴ.ソフトボールの指導内容:①2人1組でノーバウンドのキャッチボール、②2人1組でゴロのキャッチボール、③4人1組で6-4-3のダブルプレー、④4人1組で4-6-3のダブルプレー、⑤4人1組で遠投とカットプレー、⑥2人1組で投手と捕手の練習、⑦4人1組で投手、捕手、打者、球審の練習、⑧6人1組でトス打撃と守備練習、⑨6人1組でハーフ打撃と守備練習、⑩6人対6人の簡易ゲーム、⑪スローピッチのルールを学校ルールで行う、⑫スローピッチとジュニアルールで行う(略)、⑬スローピッチで公式ルールで行う(略)、⑭ファーストピッチで行う(略)でした。

 「Ⅴ.ソフトボールの指導内容」に関しては、学校の先生方に、プレーの仕方を学んでいただき、その先生、児童、学校等の特徴に合わせて、どの練習法が良いかを先生方に決めて頂こうと考えたのです。そこで、最後に私は、⑪スローピッチでの「ゲームのねらい」では、以下のように書きました。

 「学校ルールを制定するときは、次の点に配慮しなければならない。それらは、性差、技術差、用具と施設、指導者の専門性などである。性差に関しては、男子のみ、女子のみ、男女混合によって、投球距離や塁間を変えることが大切である。また、技術が未熟の者が集まっていた場合、バットを用いずにラケットを使用したり、内野手5名、外野手4名にする配慮が必要となるであろう。更に、指導者が経験者であれば、ゲーム中攻守に関係なく投手を務めるとか、一塁手でゲームを引っ張るといったことも可能となるのである。」と。

 「配慮」ということを強調しました。

 現在、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 体育編 平成29年7月 文部科学省によると、ほとんど全ての運動競技・種目に関して【運動が苦手な児童への配慮の例】が、事細かく丁寧に記述されています。私は、この事はとても素晴らしいことだと思っています。

 ただ、このように執筆する機会をいただいても、現場の小学校において、先生方の多くは、このソフトボール(ベースボール型球技)を、なかなか授業で取り扱ってくれませんでした。当時において、大きな悩みとジレンマを抱えていたのです。    明日に続く。