11月25日 研究と実践(その9) 1991年3月、教師は「私たちのスローピッチ・ソフトボール」を創り上げること、と書きました。 

 「体育科教育」1991年3月号では、「特集・新しい体育の教材研究」がテーマで、「ソフトボール」の教科で執筆する機会を頂きました。そこでは、当時東京理科大助教授であった丸山克俊先生と共同執筆ということで、出版社より快諾を得ました。

 「ソフトボール」・はじめに・では、「平成元年3月に一斉に改定された小学校・中学校・高等学校の学習指導要領は、教科体育『ソフトボール』にとって、極めて大きな意味をもっている。なぜならば、昭和33年以降、教育課程の基準として告示されてきた学習指導要領の中では、小学校第5・6学年、中学・高校の全学年にわたって、『ソフトボール』が主要教材として明記されたことは、今回が初めてのことだったからである。本稿では、本誌1990年2月号の吉村による『ボール運動(球技)をどう教えるのか―ソフトボール(小学校)―』の提言をふまえながら、新指導要領における『ソフトボール』の教材研究を進めるための新しい観点を提示し、実際の授業においては、どのような工夫がなされなければならないのか、その基本的な課題について論究する。そのためには、先ず、ソフトボールの今日的状況を概観し、改めて“ソフトボールとは何か”を問わなければならない。」と書きました。

 本論は、四章からなり、一章は、国民スポーツとしてのソフトボールの課題。二章は、スローピッチ・ソフトボールとは。第三章は、米国におけるスローピッチ・ソフトボール。第四章は、ソフトボールの教材研究―その観点と工夫―。としました。

 第一章では、昭和54年から3年ごとに実施された、総理府「体力・スポーツに関する世論調査」における「この一年間に行った運動・スポーツの種目(競技的スポーツ)」上位5種目を示しながら説明した。1位は「ソフトボール」。昭和54(12.2)、57年(13.6)、60年(9.9)、63年(9.1)でした。2位は「野球」。54年(10.0)、57年も野球(8.9)。しかし、60年になると、2位はバレーボールが入り、60年(7.6)、63年(6.1)。野球は3位に後退し、60年(5.6)、63年(5.4)でした。10年間で野球人口はほぼ半減していたのです。

 【野球の競技人口の激減がとても気にかかるのでした。しかし、この事を、日本の多くの野球関係者、並びに野球団体は気が付いていませんでした。(私の独り言)】

 二章は、スローピッチ・ソフトボールの紹介です。「スローピッチの試合は、そのテンポは早く、打者、走者、野手の運動量は多く、しかもファーストピッチのように、投手と捕手に偏ることなく平均化されると言えよう。すなわち、走・攻・守の楽しさを、参加者一人ひとり“プレーする”実感として味わうことが出来るのである。加えて、用具においても、ヘルメット・ボディープリテクターは不必要であり、マスクについても、捕手を本塁プレートの後方に位置させ、投球をワンバウンドで捕球することを義務づけることをもって不必要とする。」と記述しました。

 【「スローピッチ・ソフトボール」は、いつでも、どこでも、誰でも、手軽に、笑顔で出来る「ベースボール型」ですよ、というのを発信していたのですが・・・。】

 第三章では、米国におけるスローピッチ・ソフトボールを紹介。ここでは、「米国におけるスローピッチ・ソフトボールを統括する団体は2か所あり、一つはASA、他の一つはUSSSRで、その広がりは爆発的であることを紹介した。一方、我が国では、日本ソフトボール協会のオフィシャル・ルールブックの巻末に付録として記されているにすぎず、最近になって、「スローピッチ・ハンドブック」という小冊子が発刊されたに過ぎない。それらの内容からしても、スローピッチの認識は、その統括協会をしていまだに未成熟であると言わざるを得ない。」と指摘しました。

 【米国では、これだけ「スローピッチ・ソフトボール」が普及して、数多くの競技人口がいるから、米国のメジャーリーグベースボールがあれほどの人気があるのですよ。一方、日本においては、スローピッチの人口をしっかり確保しておかないと将来の野球の更なる繁栄はありませんよ、と理解してほしかったのですが・・・。(私の独り言)】

 第四章では、ソフトボールの教材研究―その観点と工夫―としました。ここでは、「筆者らは、教材としてのソフトボールを考究する新しい観点として、「スローピッチ・ソフトボール」を取り上げたいのである。このスローピッチこそが、ベースボール型スポーツのゲーム構造の理解、発達段階への対応、安全性、レクリエーション性等について、柔軟性、弾力性をもった工夫が可能であり、みんなが楽しいゲームを展開できるからである。」と書きました。

 そして、最後に、教師には、「私の教材解釈」を前提として、学習者の興味や欲求、発達段階、安全性等を考慮しながら、「私たちのスローピッチ・ソフトボール」と創り上げることが求められる。と結論づけました。(11月16日の「理事長からのメッセージ」の論文を参照してください)