4月29日「1982年から2022年40年間、高校体育(ソフトボール)の副教材を書き続けています。1996年からティーボールを導入しました」

 先日、(株)大修館書店 保健体育スポーツ事業部より「大修館高校体育実技副読本ご執筆者 各位」へとして「アクティブスポーツ」[総合版]2022と「アクティブスポーツ」[女子版]2022の2冊が自宅に送られてきました。私は、この大修館書店の高校体育の副教材を約40年の間書き続けています。このような素晴らしい機会を大修館書店から頂いていること、いつも心から感謝しています。

 この大修館書店の副読本は、全国高等学校の中で、80パーセント前後の学校が採用されていると聞いたことがあります。そうだとすると、今、高校生は全国に何人おられるのでしょうか。物凄い冊数が出版されていることになります。超ベストセラーなのですね。

 さて今年の「アクティブスポーツ」の球技の部では、16の種目が紹介され、詳述されています。それらは、①ソフトボール、②バスケットボール、③サッカー、④ハンドボール、⑤バレーボール、⑥テニス、その他の10種目です。①はベースボール型、②③④はゴール型、⑤⑥はネット型です。この分類方法は小学校・中高校と同様です。

 [総合版]のソフトボールは、249ページから260ページ迄、[女子版]では、265ページから276ページ迄、それぞれ12ページに渡って記載されています。内容は、歴史、競技特性、戦術の原則、攻防の原則、1.ティーボールの攻撃と守備の原則、2.ファーストピッチ・ソフトボールの攻撃と守備の原則、体ほぐしの運動、安全に対する留意点とマナー、1-1.止まったボールを打つ、簡易ゲーム、ティーボールを楽しもう、1-2.下手投げのボールを打つ、簡易ゲーム、メジャーリーグゲーム、2-1.確実に投げ確実に捕る、ボールの正しい握り方、守備の基本練習、スローイング、キャッチング、2-2.場面に合わせた守備練習、練習ゲーム、ダブルプレー、5-4-3、4-6-3、カットプレー練習、3-1.正式なピッチングで投球する、スタンダード、スイングショット、ウインドミル、ウインドミルモーションの練習、簡易ゲーム、4-1.スローピッチのゲームの進め方と作戦の立案、4-2.ファーストピッチのゲームの進め方と作戦の立案、試合を観戦する時の視点、ルールと審判法、競技用語の解説、ゲームの進め方と主なルール、審判法、等です。

 12ページですが、とても充実した内容です。「止まったボールを打つ」。「ティーボールを楽しもう」。「メジャーリーグゲーム」等を導入しています。[総合版]と[女子版]は、ほぼ同様の内容です。採用する学校で[総合版]か[女子版]のいずれかを選択されるのです。

 この12ページの内容は、ベースボール型は、系統的に、いわゆる段階的に学べるようになっています。投げられたボールを打つ前は、「止まっているボールを打って」、誰でもが楽しめるようになっています。「高校生が行うソフトボールの中でのティーボール」は、ボールとバットはソフトボール用、そして塁間もソフトボール用18.29メートル(60フィート)です。小学生、中学生が使用するティーボールの用具は使用しません。バッティングティーは、小中高とも同じです。

 さて今日は、私が、高校体育ソフトボールの中に、「ティーボール」を導入したのはいつだろうかと調べることにしました。私の手元に2003年の「アクティブスポーツ」[総合版]と2002年「ビジュアルスポーツ」[総合版]があります。この年に大修館書店は、高校体育の副教材を大改訂したのです。前者は現在(2022年版)とほぼ同じ章立てで、内容も大きく変わっていません。約20年間この「アクティブスポーツ」の内容で、高校生は、ベースボール型のソフトボールを学んできたことになります。

 しかし、後者の2002年の「ビジュアルスポーツ」は、かなり違います。

 1996年から2002年迄の内容は、生い立ちと発展、競技の特性、準備運動、技術と練習、個人技術:1.キャッチボールの技術、練習法、2.守備の技術、練習法、3.ピッチングの技術、練習法、4.バッティングの技術、練習法、5.ベースランニングの技術、6.スライディングの技術、競技用語の解説、全員ゲーム“ティーボール”、簡易ゲームの方法、技術の評価、ルールと審判法:1.競技施設と用具・服装、2.ゲームの進め方と主なルール、3.審判法、でした。

 1996年に高校の体育ソフトボールの中に「全員ゲーム“ティーボール”」を導入しました。日本ティーボール協会をスタートさせてから2年半後。これは小学校よりも中学校よりも早かったのです。画期的なことでした。

 さて、この「ビジュアルスポーツ」はいつからスタートしたのでしょうか。私の手元にあるのは、1990年からです。1995年迄は「ビジュアルスポーツ」と後述する「図説高校スポーツ」(ハイスクールスポーツ)とは同時に販売されていたようです。

 それ以前の「図解高校スポーツ」とはどのようなものだったのでしょうか。

 「図説高校スポーツ」は、手元に1982年から1995年迄あります。1982年に私は初めて、ソフトボール種目を執筆させて頂いたのです。今から40年前になります。巻末に、種目別執筆者一覧、吉村正(早稲田大学・ソフトボール)とありました。そこで執筆されていたソフトボール以外の球技は、軟式テニス、バレーボール、ハンドボール、硬式テニス、バスケットボール、バドミントン、サッカー、卓球、ラグビー。当時は10種目のみでした。

 「図説高校スポーツ」の中でのソフトボール競技の内容は、生涯スポーツとして楽しむ、歴史、1⃣楽しむために必要な基礎知識、1.ソフトボールの特性とマナー、2.施設・用具・服装、3.試合の進め方、4.審判のやり方、2⃣楽しむために必要な技術と練習法、1.個人技術と基礎知識、⑴キャッチボール、⑵ピッチングの練習法、⑶各ポジション別の適正と技術、⑷バッティングの技術と練習法、⑸バントの技術と練習法、⑹ベースランニングの技術と練習法、集団的技術と練習法、でした。

 ティーボールは導入していませんでした。

 以上、この40年の高校体育の副教材を執筆させて頂いて、今思うことは、先ず大修館書店への深い感謝です。次に、40年前の1982年頃は、野球・ソフトボールは全盛期で、競技者や生徒は、より高い技術を求めていたのです。その証として、その大修館書店は、1980年6月「ソフトボール教室」(吉村正著)がベストセラーに、その5年後1985年「実践ソフトボール」(吉村正編著)もベストセラーでした。この頃は、野球とソフトボールの競技人口も、その読者も多かったのです。このような時は「止まっているボールを打つ野球やソフトボール」=「ティーボール」は必要なかったのです。

 以上のように、高校体育の副教材の歴史を読み解いていくと、いつの時代から高校体育のソフトボールの中に「ティーボール」即ち「止まっているボールを打つボールゲーム」が必要になって来たかが分かります。小学校・中学校でティーボールやソフトボールがプレーされていないと高校の体育で、ティーボールが必要となるのです。それは、皆がボールを打てる楽しみがあるからです。ボールが内外野に頻繁に飛んでくる球技になり得るからです。この傾向は、大学でもありました。私は早稲田大学で1975年から2016年迄「ソフトボール」の体育の授業を担当しましたので、ソフトボールを使用してティーボールを指導すると女子には特に好評でした。

 今日は、先日大修館書店より「高校体育の副教材」「アクティブスポーツ」[総合版]と[女子版]が送られてきたので、その40年間に亘って執筆していることに感謝しながらその40年のベースボール型球技(ソフトボールとティーボール)の歴史について少しばかり紹介しました。