5月1日 研究と実践(その12)小学校「教科体育」におけるソフトボールの研究(早稲田大学体育学研究紀要)1993年

 1992年「セット・トス・ミニピッチ・ソフトボール」(ソフトボールマガジン6月号)を発表した後、これをアカデミックの場で公表したいと考え、友人の丸山克俊先生に相談しました。その結論は、早稲田大学体育学研究紀要において、吉村と丸山が共同執筆者として、上記タイトルの「小学校『教科体育』におけるソフトボールの研究」を、投稿するというものでした。

 以下にその概略を紹介します。本文の発表は「日本式ティーボール」を創作するベースになり、「日本ティーボール協会」を創設すると決断したきっかけにもなったのです。

     小学校「教科体育」におけるソフトボールの研究

(吉村正・丸山克俊、早稲田大学体育学研究紀要第25巻、25-31頁、1993年)

Ⅰ はじめに

 平成元(1989)年3月に10年振りで改定された「小学校学習指導要領」の中では、教科「体育」の内容として、第5・6学年の運動領域「ボール運動」の中で、地域や学校の実態に応じて指導できる種目として「ソフトボール」が復活した。そして、平成4(1992)年4月1日から、小学校教科体育の中で、ソフトボールの授業が展開され始めた。そこでは、地域差や学校差、あるいは児童の興味や関心を考慮しながら、どのようなソフトボール・ルールを創造するべきか、そして実施するべきかが重要な課題となっている。本来、小学生に対するソフトボールの指導は、児童がスポーツの楽しみや喜びを味わうことのできる授業にしなければならない。児童がソフトボールを楽しむためには、頻繁にボールを投げ、捕り、打ち、走る授業を展開することが大切となる。そのためには、ソフトボールのどのボールを使用し、どんなルールに則って、試合を行うか考究しなければならない。それによって指導法や練習の仕方が変わってくる。この選択を誤まると、一部の児童のみが楽しくプレーするソフトボールとなり、大勢のソフトボール嫌いの児童を生み出すことになりかねない。本研究は、ソフトボール入門期の小学生に適した「ルールの柔軟性」と「小学生ソフトボールの必要性」について考究するものである。

 と書いた。そして次に、

Ⅱ ソフトボールの特性 

 1.試合の特性(略) 2.ボールやルールの特性(略) 3.ファーストピッチとスローピッチの特性(略) 

Ⅲ 体育授業のための「柔軟性に富んだルール」の提案 

 1.投手のルールに柔軟性を(略) 2.野手のルールに柔軟性を(略) 3.打者と用具のルールに柔軟性を(略) 4.走者のルールに柔軟性を(略) 

Ⅳ 小学生用「ソフトボール」の考案 

 1.「セット・トス・ミニピッチ」ソフトボールの系統性(略) 2.各種ボールの考案(略) 3.セット・ソフトボール 1⃣ ティ・ソフトボール(略) 2⃣キック・ソフトボール(略) 4.トス・ソフトボール 1⃣ トス・ソフトボール(略)  2⃣ ハンド・ソフトボール(略) 5.ミニピッチ・ソフトボール 1⃣ 14インチ・ミニピッチ・ソフトボール(略) 2⃣ 12インチ・ミニピッチ・ソフトボール(略) 3⃣11インチ・ミニピッチ・ソフトボール(略)

まとめ

 本研究では、日本ソフトボール協会の「ジュニアルール」に則って、小学生が体育授業としてソフトボールを行うことに対する問題点を指摘した。そして、用具やルールは、協会検定2号ボールや2号バットに限定するのではなく、小学生に適合するような柔軟性に富んだものであるべきことを提案した。そして、小学生を対象として、ソフトボールを系統的に展開するために、「セット・トス・ミニピッチ」ソフトボールのルールを考案し、成文化した。その意図は、性差、技術差に関係なく、皆が楽しく、安全にプレーできる魅力的なゲームを全国各地に普及することにある。ただし、ここで付記しておきたい事は、以上のようなルールが絶対的なものではないということである。ソフトボールを小学校の体育授業として実施する場合には、指導者は、常に施設、用具、児童の数と質、技術水準、身体的、精神的コンディション、そして、学校や地域の環境等にも考慮した上で、独自の「学校ルール」や「学年ルール」を柔軟性をもって決定することが大切だからである。

 以上です。

 これは、1992年6月「セット・トス・ミニピッチソフトボール」をソフトボールマガジンを通して、地域やソフトボール愛好者へ提案したことと、この度の投稿が少し異なるところは、学術雑誌に掲載したことです。研究者・大学の体育系の教員を相手に、これを問うたのです。

 この報告(論文)の8ヵ月後に「日本ティーボール協会」を発足させたのでした。