7月25日「ソフトボール・マガジン休刊に寄せて―書き尽くせない感謝―2022年7月25日 吉村正」

 本日7月25日、日本ティーボール協会事務所に「ソフトボール・マガジン」が届きました。約45年間続いた「ソフトボール・マガジン」は、今月号をもって休刊です。残念でなりません。5月の終わりに、ベースボールマガジン社の秘書課から池田哲雄社長が私に会いたいとのお電話があり、都内のホテルでお会いしました。その時に社長から丁寧に「休刊」の報告を受けたのです。大きなショックでした。それは、これでまた「ソフトボールのみならず、野球の競技人口並びにファン」が極端に減少するな、と思ったからです。

 この「理事長からのメッセージ」でたびたび書いていますが、アメリカでは5、60年前、小学校と中学校を創立するときには、校庭にソフトボール場を4、5面設置することが、義務づけられていました。その頃は、小学生・中学生が学校の中で盛んにソフトボールを楽しんでいました。今はその設置義務はありません。これが「今日アメリカでの野球・ソフトボール人口とファン」を大きく減少させる要因になっているのです。アメリカの50年ほど前の百科事典には、「アメリカのソフトボールの競技人口とファンは1憶2千万人以上。アメリカ最大のアマチュアスポーツである」と記されていました。当時、この人たちが、アメリカの野球、即ち、メジャーリーグ野球、並びに3A、2A、1A、地方の野球リーグを支えていたのです。ソフトボールも同様でした。

 ソフトボール人口を減少させると、日本の野球人口は確実に激減します。「ソフトボール・マガジン」のない今後、日本の野球やソフトボールはどのような道を歩んでいくのでしょうか。とても心配です。それほどこの「ソフトボール・マガジン」は、ソフトボール界だけでなく、野球界にとっても大きな存在だったのです。

 本日送られて来た「ソフトボール・マガジン」の表紙は、「広がれ!ソフトボールの輪」「特集・ソフトボールが好きだ!」です。また、アンケート企画として「ソフトボールの魅力とは?」もあります。更に、特集②では、2022インターハイ展望でした。えっ!休刊に関する記事はどこ?

 休刊に関して記述があるのは、90ページ中2ページのみでした。それは、87ページに、私が編集長に特別にお願いして執筆した「寄稿:ソフトボール・マガジン休刊に寄せて―書き尽くせない感謝―」と、90ページの「編集部より休刊のご挨拶」でした。少し寂しい気がします。この45年間を振り返ると、この「ソフトボール・マガジン」の多大なるソフトボール・野球界への貢献を私は誰よりも知っているからです。

 ソフトボール・マガジン最終号が本日7月25日に発刊されましたので、今月初め編集部に送った記事を、この「理事長からのメッセージ」の下に、貼り付けています。ご一読頂けると幸いです。

 ソフトボール関係者・競技者・ファン、読者の皆さん、更には野球関係者の全ての皆さん! 過去の「45年間、感謝!」そして未来へ「グッド・ラック!」

 ソフトボール・マガジン休刊に寄せて 「―書き尽くせない感謝―」

                吉村正(早稲田大学名誉教授)

 5月25日(木)新宿のホテルで、ベースボール・マガジン社の池田哲雄社長とお会いした。その折、「ソフトボール・マガジン」を7月発売、9月号を持って休刊するという報告を受けました。「創刊号から今月号まで、お世話になりました」と。私は「ソフトボール・マガジンによって、様々育てて頂きました。こちらこそ感謝しかありません」とお答えしました。

 創刊号の時から、社長のお父上恒雄先生から、大変なご好意を頂き、執筆する機会を誰よりも多く頂きました。本誌において25年間絶えることなく書き続けさせて頂いたこと、大きな喜びであり、誇りです。特に1980年7月から1986年8月迄の6年間「中級者のためのソフトボール」を連載。1986年9月から1988年9月迄「アメリカソフトボールの技法」。1990年5月から1993年5月迄の「現代ソフトボールの戦法」。1992年4月から1995年6月迄の「アトランタ五輪に向けて 吉村正の目」。1995年7月から1997年5月迄の「ソフトボール元年」。1998年3月から2001年12月迄の「吉村式驚異のピッチング上達法」等はとても印象に残っています。これらのダイジェスト版でベースボール・マガジン社から、11冊の単行本を刊行して頂きました。感謝・感謝です。

 また、ソフトボールや野球の競技人口の減少に歯止めをかけようとして、私が中心となって作り上げました「日本式ティーボール」では、1994年2月から2004年2月迄の11年間「ソフトボールの“原点”ティーボール」という題目で連載をさせて頂きました。これらのダイジェスト版も3冊、ベースボール・マガジン社から単行本となって出版されています。

 ソフトボール・マガジンは、ソフトボールの競技性を追求した我が国唯一無二の専門誌であります。それに加えて、ソフトボールの本質である「いつでも、どこでも、誰でも、楽しめるソフトボール」をいつも視野に入れて、本作りをされました。ソフトボール界のみならず野球界の底辺拡大等にも、多大の貢献をなされたことは、言うまでもありません。

 本誌からどれほど多くのソフトボールのスター選手が世に送り出されたことでしょうか、また、ソフトボールを楽しんだ少年少女が、どれほど日本や世界の政治・経済・文化・スポーツ等で活躍されたでしょうか。この欄では書ききれません。それ程本書の貢献は偉大です。

 2022年9月号を持って、「休刊」となりますが、今後は、時代に合わせて、デジタル化等されると聞いています。その試みが、次への大きな成功への出発となることを、期待します。

 ソフトボール・マガジン並びに池田哲雄社長、恩人で天国の池田恒雄先生と池田郁夫前社長、長年のご指導に対し、この休刊を機に、改めて心から感謝いたします。ありがとうございました。