4月4日 163キロの佐々木朗希投手に圧倒される。彼を指導したくなりました。「ムービング・ファーストボール」です。

 佐々木朗希投手が快投。163キロのストレートを連発、8回99球1失点。13三振を西武から奪いました。投じた99球中70球のストレートは平均159.5キロ。私が今日読んだ3紙の新聞は、朝日、サンスポ、日刊スポーツです。これらの記事で共通するのは、佐々木投手の一番速いボール(速球)を「直球」と書いていることです。恐らく他の新聞も同様の表記でしょう。私はもう50年ほど前から、「直球」は打者に打たれるボール。直球は、打者から見ると最も打ちやすいボールである、と度々書いてきました。「直球」はそのボールが「動く」こと。英語でいえば、「ムービング・ファーストボール」(動く直球)。投手はこのボールを投げることが最も大切なのです。

 このことについて、私が最初にアドバイスを受けたのは、1969年、1970年の時でした。アメリカで私が投手に入ったときのコーチからです。「ウィリー(私の英語の名前)、ファーストボール(速球)は、ムーブしなければ打者に打たれるよ」というものでした。当時の日本は、投手の投げるボールが縦回転でキレイに真っすぐ投げないと、コーチや監督から、「お前、直球投げているのにシュートしてるやないか!」。このような指導を受けていましたから、このアメリカでの指導は、驚きというか、とても納得できるものでした。

 当時日本の投手への指導は、「投手は、走れ、走れ」。ボールは、「真っすぐ(直球のこと)」、そして、コントロールは、「針の穴を通すように」でした。私は、走れと言うアドバイスは理解できましたが、真っすぐと針の穴は、前者の直球は打たれる、後者のそんなコントロールは無理、と考えていました。そこでアメリカのピッチングコーチからこの指導です。そうだよな、私が打者として出場するとき、投手からの最も打ちやすいボールは、「真っすぐ(直球)」だもんな、です。

 私は、塁間30フィート、バッテリー間35フィートのファーストピッチ・ソフトボールを3年間プレーしました。それはそれはレベルの高いリーグでした。塁間30フィートというのは、約9.15メートルです。使用するボールはその周囲が14インチ。オリンピックで使用するボールの周囲は12インチ、野球のボールは9インチ。12インチのボールを使用して、投捕間14.02の距離から130キロ投げる選手が、14インチでは、投捕間約9メートル50センチから投げるのです。その投球スピードは体感180キロぐらいと思われます。慣れない打者は先ず打てません。私も、最初にこのソフトボールをプレーした時は、投球が速過ぎてバットにかすりもしませんでした。しかし、1、2週間すると、振り遅れでもバットの芯でとらえるようになりました。そして、1ヵ月ほど練習をすると、ダイヤモンドの中に打てるようになるのです。人間の適応能力は物凄いものがあります。 

 このソフトボールリーグで私は、最初の1年目は.500(5割)を打ちました。二年目は、.379(3割7分9厘)、三年目は、.429(4割2分9厘)です。バッテリー間が狭いので、投手が投げる変化球はチェンジアップ等に限られます。直球に絞るのです。だから打てるのです。この時、同時に野球も別のリーグでプレーしていましたが、その時の野球の投手の速球は、140キロであろうが150キロであろうが速く見えないのです。多分、160キロでも速いと思わなかったでしょう。 

 このような経験を53、4年前しているものですから、直球はそのボールがいくら速くても打てると思っています。だから、私の投手への指導は、直球は一球たりとも投げさせません。なぜなら、打者にとって一番打ちやすいボールだからです。投球の全てが「ムーブ」するボールを投げなければ、良い投手とは言えません。現在の投手でいえば、ダルビッシュ有投手が理想といえるでしょう。 

 昨日のNHKのサンデースポーツを観ました。ゲストは落合博満さん。あの三冠王を三度獲得した偉大な選手、監督としても「俺流」で見事な戦績を収められました。司会者が、落合さんに質問。「落合さんが打者の場合、佐々木朗希投手をどのようにして打ちますか」と、落合さんは即答です。「全て直球を狙います。他のボールは絶対打ちに行きません」。さすが!

 当然ですよね。163キロは、打者がそのボールに目が慣れれば、そのボールは打てるのです。今日のサンスポ、日刊スポーツ、朝日新聞を読むと、佐々木の投球99球中70球が直球だったそうです。この確率なら、「直球」だけにタイミングを合わせて打ちに行くのです。これを狙わない手は無いでしょう。直球以外は絶対手を出さない。もし直球とフォークボールの両方を狙うとなると、佐々木投手、松川捕手の思うつぼです。投球に緩急をつけています。打者は極めて打ちにくいのです。バッテリーの思うつぼです。

 佐々木朗希投手が、今の「直球」が「ムービング・ファーストボール」に代われば、アメリカのメジャーリーグでも大活躍できるでしょう。そのためには、「少し」ボールの握りを変えるか、「少し」だけ捻るか、「少し」だけ切る(カット)か、滑らすかをすると、投球は動きます。捕手でも捕球しにくいボールを投げることができます。くれぐれも「少し」だけです。でないと、直球の速さが失われます。155キロぐらいでボールを動かせると桁外れの投手となるでしょう。

 今日は、佐々木朗希投手の投球を観て、彼を指導したくなりました。それが出来ないので、この「理事長からのメッセージ」で、好き勝手なことを書きました。

 今週のマンデーモーニング・クオーターバックでした。