6月28日 「慶應野球と近代日本」。福沢諭吉先生「体育は、独立自尊の人になるための手段」。小泉信三先生「困難を乗り切れる体験」。

  6月25日(土)13時~16時30分:「慶應野球と近代日本」開催記念講演会・シンポジュウムに出席するために、慶応義塾三田キャンパス西校舎531教室に行って参りました。「講演会」では、講師として、佐山和夫氏。「シンポジュウム」では、清澤忠彦氏(早慶6連戦の時のエース・住友金属元監督)、上田誠氏(元慶應高校監督)、堀井哲也氏(現慶應大学監督)、前田大介氏(祐吉元監督のご子息)、上田まりえ氏(スポーツキャスター)で、この司会者は、古葉隆明氏(元広島カープ監督のご子息)と都倉武之(慶応義塾福澤研究センター准教授)。そして、「閉会にあたって」では、池井優慶應大学名誉教授が、登壇されました。

 ここでお目にかかったことがあるのは佐山氏と都倉先生のみ。他の方は有名な方ばかりですが、皆初めてです。早稲田大学関係者は、どこを探しても私だけのようです。知人はいません。慶應大学の錚々たる方々が、慶應野球部をどのように自己分析されるのか、また、ライバル早稲田をどのように評価されるのか、興味津々でした。

 最初は佐山和夫氏の講演会「野球はどこから、どうして」13時~14時15分迄。佐山氏の最も得意とする分野。私は、佐山氏が1993年4月に書いた「野球とクジラ」(河出書房新社)を30年前に読んでいます。また、2000年4月に書かれた「野球はなぜ人を夢中にさせるのか」―奇妙なゲームのルーツを訪ねて―(河出書房新社)は、佐山氏と一緒に食事をしたとき、本人からサイン入りで頂きました。講演会の話の内容は、この2冊の名著がもとになっています。14時15分が過ぎても講演を終わりません。それだけ佐山氏は野球がお好きです。時間が押していくのは分かっていたのですが、私はニコニコしながら講演の延長戦を楽しく聞いていました。

 総合司会は、フジテレビアナウンサーの山本賢太氏、本人が自己紹介の時におっしゃっていたのは、慶應で高校・大学の7年間野球部に在籍していたとのこと。佐山氏の話を真剣に、興味深く聞いておられました。

 講演中、「あっ!共同通信社のEさんだあ!」。ここで知っている人が初めていました。Eさんが私の肩をポンと叩いて、また、登壇者の写真を撮りに行かれました。グッ・ジャブ。Eさん。

 講演が終わって、廊下に出ると、Eさんとバッタリ。彼と一緒に控室に帰った佐山氏に、久しぶりのご挨拶とマーティー・キーナート先生からの伝言をいたしました。十数年振りの再会です。佐山氏にもこの「理事長からのメッセージ」「耐えて克つ」(上巻)を送っていたので、そのお礼も頂戴し、更に加えて、佐山氏と日本式ティーボールの話。この楽しい会話で、今日、ここに来た甲斐がありました。

 次は、「前田祐吉野球殿堂入記念シンポジュウム」。題目は「今、Enjoy Baseballを語る」14時40分~16時10分迄。古葉氏の司会で始まり、登壇者の5人がそれぞれの立場で前田祐吉氏の思い出、それに加えて野球愛を語られました。私の年代では、何といっても清澤氏、岐阜商業高校で甲子園であの大活躍。慶應では、物凄い投手でしたが、早慶6連戦では、慶應の負け。印象に残った言葉は、「今のピッチャーはもっと球数を投げねば」です。確かに今の投手は練習において、投球数が少ないです。上田氏は、高校野球の名監督から転職。現在は、慶應大学の1・2年生部員の育成を任されているとのこと、シンポジュウムでは、慶應は「スポーツ推薦はありません、だからこの段階でしっかりしたアスリートつくり、体つくりをするのです」と。この言葉は、とても印象に残りました。

 堀井氏は現在慶應義塾大学の監督さん。「厳しい中でも、自主性を」「今、東京6大学は皆強いです」、一言一言に隙がなく、しっかりした物言いです。この方なら、学生はついて行くだろうなと予測できます。監督として、雰囲気があります。早稲田大学野球部監督の小宮山さんを誘って、隠れてこのシンポジュウムを見たり聞いたりしたら、これ更に面白くなったのにとか、勝手に想像していました。

 この段階では、「Enjoy Baseball」は、登壇者からあまり出てきません。「考える野球」(シンキング・ベースボール)は良く出るのですが。そこで、主催者でもあり、司会者としても登壇され、この会をより充実したものにする努力をなされた都倉武之先生が纏められたものの一つをご紹介します。

 福沢諭吉先生は、目的を見据えたうえでの「体育は、独立自尊の人になるための手段」(合理性・科学性)である、と。また、小泉信三先生は「困難を乗り越える体験」とおっしゃったとのことです。都倉先生が、これを紹介されました。いいですね。

 最後の池井優先生の「閉会にあたって」では、相変わらず紳士で、その話しぶりも流れるようです。「ミケンズ、別当、長嶋、千葉、鶴岡、昔の思い出話・・・」過去の名選手の名前が次から次にと出てきます。さすが野球通。よお!オオトリ!と言う感じでした。

 このシンポジュウムを通して感じたことは、慶應大学の野球部現役並びにOBの皆さんは、早稲田大学を本当にリスペクトしてくださっています。それがアウエイの私にも伝わってきます。同様に、立教、明治、法政、東大と、6大学加盟校に対しても敬意を示されています。慶應はさすがに紳士です。私は紳士は大好きです。早稲田が見習うべきところは極めて大きいです。

 とても、素晴らしい時を過ごさせて頂きました。案内を頂きました都倉先生、慶應大学野球部の皆さん、関係者の皆さん、ありがとうございました。人生2度目の慶應大学三田キャンパス行でしたが、今風に言うと「最高」でした。

 早稲田大学にとって慶應義塾大学は尊敬できる最高の大学です。永遠のライバルであり続けたいですね。