11月3日「首相グラスゴーへ その地で日本式ティーボールとソフトボールを指導された丸山克俊先生を思い出しました」

 昨日、岸田文雄首相が、首相就任後初めての外国訪問として、イギリスのグラスゴーを訪れたとの報道がありました。

 グラスゴーというと、丸山克俊先生にティーボールとソフトボールの指導に行って頂いた忘れられない地域です。今日は、なぜそのグラスゴーに丸山先生が指導に行かれたかを少しばかり皆さんに紹介しましょう。

 1999年4月、「日本ソフトボール&ティーボールアカデミー」を創設し、私が会長、副会長に東京大学の平野裕一先生と丸山克俊先生、このアカデミーは、①世界に野球・ソフトボールを普及させる。②若手研究員が野球かソフトボールの研究をしっかり行うのなら、年間に3名に対して奨学金を出す。③国内で更にソフトボール人口を増やす。④ウインドミル投法の基本と実践を最高のレベルまで引き上げるという4大目標をもってスタートしました。この試みには、ナガセケンコーの当時の社長である長瀬二郎氏の応援と決断によるところが大でした。

 国内での活動は、早稲田大学の所沢グラウンドに全国のソフトボールの精鋭を集め、指導者は、三宅先生(現日本ソフトボール協会会長)、利根川先生、鈴木先生と私の4人が上級者に対して、初心者には丸山先生が指導、そして打撃の指導では、荒川先生、近藤和先生、種茂先生、それにコンディショニングは、落合さんのコンディショニングコーチの池田先生と日体大の小川先生等が担当しました。指導者がこの顔ぶれですから、そのアカデミーは毎年大変な盛況でした。このアカデミーの活動報告は毎年「ソフトボールマガジン」で行っていました。

 一方、世界戦略も我々は考えました。野球・ソフトボールの未開の国はどこか?、南アメリカとヨーロッパの普及を考えようと結論を出しました。この件で、とても大きな役割を果たしたのが、ナガセケンコーの当時営業本部長の田辺理氏でした。彼はナガセケンコーに勤務されるまでは、商社ニチメン(日商岩井と合併して双日となる)の重役さん、そのネットワークを利用させて頂いて、南米ではブラジルから、ヨーロッパはイギリス、ドイツ、オーストリア等から少しずつソフトボールとこの日本式ティーボールを広めて行こうということにしました。

 南米関係は私が中心となり、普及に努めました。特にブラジル野球・ソフトボール連盟の指導者と選手は、日系人の方がほとんどでしたので、アメリカとブラジルの日系人関係団体を利用して、頑張りました。リオオリンピックの前は、ブラジルのソフトボールチームを強くし、メダルが取れるところまでレベルをあげれば、ブラジル政府が動き、リオで野球とソフトボールは、オリンピックに復活する可能性が出てくるだろう。と勝手に思い、そのようなプロジェクトも日本で創りました。早稲田大学ソフトボール部の学生も毎年2名ずつ12年間に亘ってブラジルに送り、私もブラジルナショナルチームの指導をブラジルでも日本でも行いました。

 同時期に、丸山克俊先生は、イギリスのグラスゴー、オーストリアのウイーン、ドイツのフランクフルトに飛び、以下の指導を順序だって行われたのでした。①ウォーミングアップ ②キャッチボール ③ウインドミル投法の段階的投球法 ④バッティングの基本(ティーボールを含む) ⑤シートバッティング、と。この内容については、1999年12月号と2001年1月号において、丸山先生ご自身が「ベース・ボール教育論」の中で触れておられます。

 この「ベース・ボール」の中黒「・」は私にとってとても大きな意味があります。1998年小学校学習指導要領で「ベースボール型」と記載されるまでは、私が書く「ベース・ボール」とは「ベースを置いたボールゲーム」の意だと、丸山先生には教えました。そのため、このソフトボールマガジン連載のタイトルは「ベース・ボール教育論」だったのです。

 丸山先生のグラスゴーでのティーボールとソフトボールの指導は、物凄く印象に残るもの、感動的なもの、ということを、この講習会に同席され、見学された田邊理氏から、何度となく聞かされました。丸山先生の心から出る言葉と気合、身体から出る表情と笑顔、これらが凄い。イギリスの子ども達に感動を与え、ティーボール好き、ソフトボール好きにしてしまうのでした。その指導法の凄さは、私は日本で100回以上観ているので想像がつきます。皆さんもあの東京ドーム、京セラドーム、そして講習会の情熱、気合、笑顔、迫力、何事においても全力投球、お分かりですよね。

 岸田文雄首相がイギリスのグラスゴーに行かれたので、その地で情熱的に日本式ティーボールとソフトボールを23年前指導された丸山克俊先生を思い出しました。

 野球とソフトボールをオリンピック種目に戻すのは、上記のような活動を野球関係協会や連盟、そしてソフトボール協会関係や連盟が行うことが焦眉の急ですね。天国の丸山先生!