3月29日「ルールブック ルール解説の「あとがき」」
1993年11月22日、「日本ティーボール協会」が発足し、その期にこのルールを世に公開・披露しました。そして、翌年、1994年2月「ティーボール入門」を刊行し、ルールの(抄)いわゆる「抜き書き」を世に出しました。年間約6,000部発行し、今日まで27版毎年刊行しています(計162000部)。そして、同年、4月には、「ティーボール・オフィシャルガイド&ルールブック」をベースボール・マガジン社から刊行しました。その1年半後の1995年4か国語(日本語・英語・中国語・韓国語)のルールブックを作成し、アジアの野球・ソフトボール協会や連盟に無償で配布。この活動によって、学校関係、野球・ソフトボール協会、連盟、あるいはまた、アジアの関係団体から、様々なご意見、ご報告、アドバイス等を頂けるようになりました。
1998年11月、学習指導要領改訂により小学校・中学校の教育現場でベースボール型の ゲームが行えるようになりました。そこには「ゲームの例」手やラケットなどで打ったり、止まっているボールを打ったりするゲームと記されたのです。「止まっているボールを打つ」。これは正に「日本式ティーボール」を指すのでした。それを受け、2000年4月「小学校の体育」副教材「みんなの体育」(学研)の4年生と5年生版にティーボールが絵入りで掲載されたのです。
10年後の2008年8月、小学校学習指導要領改訂の時、体育編3・4年生でのティーボールに加え、5・6年生においても(ウ)ベースボール型の中で、[例示]ティーボールと明記されたのでした。それを受けて、我々日本協会では、「笑顔いっぱいティーボールの教材を作る会」という勉強会を立ち上げ、全国の小学校の30名を超える先生方、また500人を超える当時の学生たちのレポートを参考にして、「笑顔いっぱいティーボール」の冊子を1年かけて制作し、2009年5月22、476校全ての小学校にこの冊子を配布したのでした。
その後、この冊子を、2009年に英語、中国語、韓国語、ポルトガル語に翻訳し、これもアジア諸国並びにブラジル、ペルー等に無料配布。これが、今日の中国、台湾、韓国、ブラジル等での普及・発展に貢献しているのです。
その流れで、2010年1月「アジアティーボール協会」が日本、韓国、中国、台湾等が中心となって設立されました。初代の会長は吉村正、理事長はスコットダグラス、公用語は英語と決めました。この協会を設立した関係で、この年から毎年西武のドームでアジアオープンティーボール交流大会と文部科学大臣争奪全国小学生3・4年生ティーボール選手権大会とを同時開催しています。「オープン」としているのは、ペルーやブラジルも参加可能としているからです。その他アジアの数か国からこの大会に参加したいという連絡が入っています。
一方、日本ティーボール協会では、十数年前から幼児への普及、指導を加速化して、幼児用の用具・ルール等を次々と発表して行きました。その活動に興味を示されたのが、日本野球連盟でした。日本野球連盟と一緒になって2015年7月都市対抗野球決勝の日に「第1回(親子)ティーボール教室in東京ドーム」に約1500人を集めて開催しました。ここには日本高等学校野球連盟、日本野球機構、全日本野球協会、全国野球振興会(プロ野球OBクラブ)、新聞社初め多くの野球関係者が視察に来られたのです。それ以降、各種の団体がこのイベントを参考にして、独自の幼児や小学1・2年生を対象としての教室を開催されるようになりました。また、軟式野球連盟やソフトボール協会関係者も意見交換に来られたりしました。
日本式ティーボールは、このようにして、多くの野球・ソフトボール関係者のご協力により、加速度的に、そうです、驚異的な勢いで普及してきたのです。この原動力は日本協会の理事・評議員の皆様の献身的努力があってのことでした。心から感謝いたします。
さて今後日本ティーボール協会はどのような道を歩むべきか。ここに提案します。
先ず、学校教育の場には、このまま日本式ティーボールが必修として入り続けるよう、小学校の先生方と常に研究会や研修会、勉強会や実践発表会を継続して行うことです。
二つ目は、今までに連携してきた野球やソフトボール関係団体のご理解を得て、協働していくことです。
三つ目は、常に世界を視野に入れ、子どもの国際交流を継続的に行うことです。
四つ目は、用具の改良・改善に努めることです。そのためには、一般財団法人製品安全協会のSGマークが付与されているバットの使用を徹底させることです。同様に、そのバットの審査にあたって用いられたボールを日本協会としては、J・T・Aのマークを記し公認しています。このボールを必ず使用させることです。そうしないと我々が長きに渡って吟味・検討して作成したルールが活きません。そして、バッティングティー。これも近い将来上記製品安全協会からSGマークが付与されるように改良を加えていくことです。バット、ボール、バッティングティーの3点セットを常により良い製品にしていくことは、日本式ティーボールをより楽しく、安全に行うためには極めて重要となるのです。
そしてもう一つ、多くの野球・ソフトボール・ティーボール関係者に提案します。
それは、野球・ソフトボールをオリンピックの最重要種目として位置付ける努力を継続して行うことです。そのために次のことをぜひ皆さんと一緒になって考えていきたいと思っています。それは、野球やソフトボールを、インプレー中選手が動き回るゲームにしないといけないということです。野球・ソフトボールの「間」は大切ですが、「間延び」してはいけません。オリンピックの正式種目というのは、競争している瞬間は、全ての人が全力で走ったり、泳いだり、ボールを捕りに行ったり、打ったりしています。野球やソフトボールで試合中、外野に一球もボールが行かないこともあります。これではオリンピックの正式種目としてふさわしくないと判断されてしまう可能性が高いです。
ここでヒントとなるのが、「ティーボール」です。一球ボールを打てば、打者は一塁に走り、野手はそのボールを捕りに行きます。これです。
「一球ベースボール」、「一球ソフトボール」です。投手がストライク(打つという意味)を投げると、打者はそれを打つ。見送れば即アウト。投手がストライクゾーンに投げないで(ボールを投げて)打者が打たなければ、打者は即一塁。これなら、スリーアウト交代でも全員打撃制でもOKです、5インニング、試合時間は1時間半前後で終わります。打者は一人5回前後打てます。内野手・外野手は頻繁にボールが飛んできます。ナイスバッティングもナイスキャッチも沢山出ます。選手も観衆もエキサイティングなプレーが数多くみられます。今日の2時間も,3時間も続く野球やソフトボールの試合で、投手と捕手と打者だけが動いて、他の選手の動きが少ないと思われるゲームでは、今後オリンピックの正式種目に入り続けるのは本当に難しいと考えます。
「日本式ティーボール」を30年前、世に提案した時は、野球やソフトボールの底辺拡大という理念を正しく理解されませんでした。野球界やソフトボール界から、「第3のベースボール」かと思われ誤解をされたこともありました。それが今は、多くの方々が前述のように「日本式ティーボール」を応援してくださるようになりました。
これからの30年、この「一球ベースボール。一球ソフトボール」を世に浸透させることです。これだとオリンピックの正式種目となり、世界で大きく広まっていく確率は間違いなく高くなると思います。
最後になりましたが、30年前このルールを作成するにあたりご協力くださった仲間。小学生用並びに幼児用ティーボールのバット、ボール、バッティングティーを作るにあたってアドバイスくださった業者の方々、協会がスタートしてから出会えた野球・ソフトボール関係者の皆さん、このような素晴らしい皆さんとの出会いがあってこの日本ティーボール協会は今日を迎えています。そして30年後への未来も語れるようになりました。
ここにティーボールに関係される全ての皆様に感謝し本書の「あとがき」とします。
2021年5月 NPO法人日本ティーボール協会 理事長 吉村 正