4月22日「大谷翔平選手が、6回1死まで完全試合。打っても2安打。初回からユニフォームが汚れていたのは印象的でした」
昨日は、大谷翔平選手の「ショウタイム」が、アメリカや日本といった野球王国の国々の人を驚かせました。6回1死までは完全試合。6連続三振を含む、12奪三振。打っては1番打者で投球を開始する前に2回の打席を終えました。こんなこと見たことも聞いたこともありません。第1打席は四球、同じ回2度目の打席には、レフトオーバーフェンス直撃の大二塁打で、打点は2。チームは初回に大量6点を先取しました。
私が一つ驚いたのは大谷選手のユニフォームが上下ともグラウンドの土で汚れていたことです。初回の第一打席四球の後、相手投手の牽制球を投げられた際に、頭から滑り込んだためです。最近はこのように投手がユニフォームを汚して投球に入るという光景はあまり見ません。高校野球でたまにありますが・・・。DH制の採用や投手は次の投球に備え、「あまり無理をしないで、走塁をせよ、リードは少な目に」という教えがあちこちの中学や高校の野球部や社会人野球やセミプロ球団で聞かれるからです。勿論、プロ野球では先ず見られません。
50年、60年以上前の野球界では、ユニフォームが汚れているのは、一つの勲章と思われた時代がありました。一生懸命にボールを追っかけている選手は、ユニフォームは汚れているものだ。捕れない打球でも飛び込んでユニフォームを汚してハッスルしているように監督にアピールするべきだ。根性のあるやつは、ユニフォームは汚れているものだ。こんな考え方が主流であった時代がありました。
選手はわざとユニフォームを洗わないで、毎日のように汚いユニフォームを自慢げに着ていた人もいました。「お前は、スイ・スイ」と言われたりすることを得意がる選手もいました。「スイ・スイ」とは、「汗がユニフォームにしみ込んで、何とも言えない否な匂い」がする、いわゆる「汗臭い」ことを言います。その時代では、投手のみならず、多くの選手がユニフォームを洗わないで、汚いまま、試合に出場することもよくありました。
当時、洗濯機はありません。洗濯板でごしごしと選手自身がユニフォームを洗います。石鹸も節約をした時代です。親は何しているかというと、戦後ですから、先ず家族全員がご飯を食べるために寝ることを忘れて仕事をしています。内職も当然のようにしています。そんな環境で、親にユニフォームを洗ってください、なんて言えません。中学生や高校生の野球部員は、「スイ・スイ」ユニフォームで、更に誰よりも汗を掻いて、投げて、走って、打って、野球を楽しむのでした。
こんな時代を、昨日の大谷翔平選手の大活躍を観ながら思い出していました。現在では、今日来たユニフォームは、先ずその日のうちに洗濯して、乾かして、翌日は新品同様のユニフォームでグラウンドに出るのが一般的です。いつ頃ですかね、ユニフォームを毎日のように洗うという習慣が出来たのは? 少なくとも1969年、私はアメリカでプレーするまでは、毎日ユニフォームを洗った記憶はありません。アメリカでプレーし始めて、コインランドリーとの出会いがあるまでは。
日本では、ひょっとしたら私は「スイ・スイ」とまではいかなくても「汗臭い」ユニフォームを着ていたかもしれません。
私が1985年、ハワイ大学に野球部の非常勤コーチをしていた時、レス・ムラカミ監督の下で、ボビー・フジムラが「用具担当職員」として雇われていました。彼は1970年私とジョリー・ロジャースというチームでバッテリーを組んだ男です。バッティングはそれほど凄いという訳ではありませんでしたが、頭が良く、性格のいい選手でした。英語がそれ程上手でない私を、見事にリードしてくれました。その彼が14年後、私がハワイ大学に戻ったときに、野球部の用具担当職員となっていました。彼の仕事は、試合が終わると選手全員のユニフォームを洗って、そしてアイロンをかけて、きれいにたたんで翌日の試合前に、選手一人一人に手渡すのです。驚きました。選手のためにそこまでするのか。自分のユニフォームぐらい自分で洗えよ。アメリカはどこに行っても「コインランドリー」があるではないか。それが私の考えでした。それを監督のレス・ムラカミに言うと、監督は、タダシ(私のこと)!これが入部の契約条文に入っているのだよ。選手全員がハワイ大学からスカラシップ(奨学金)をもらって野球部に入部しているから、この洗濯は我々大学職員が行わなければならないのだよ。ですって。当時は驚きましたね、これには。
大谷さんが、ユニフォームを汚して、投げて、走って、滑って、打っているのを見て、遠い昔の野球選手を思い出しました。また一方では、リトルリーグのユーティリティープレヤー・スーパーマン選手のように活躍している大谷選手の姿には、感動と喜びを覚えました。相手チームのアストロズ・ベイカー監督は、「完全試合にならなくてホットした。素晴らしい投球」ですって。これ以上の褒め言葉は無いでしょう。大谷翔平選手!ワンダフル。ファンタスティックです。
そこで、昨日の大谷翔平選手の成績ですが、投手としては、前述したように完璧の出来です。打者としても4打数2安打、1二塁打。それに、6回の打席ではなんと投手前のバントヒット。正に、投げて、打って、走っての「ショウタイム」でした。