12月22日 研究と実践(その11)「セット・トス・ミニピッチ・ソフトボール(ベースボール)」の提案(ソフトボール・マガジン)

 1992年6月号「ソフトボールマガジン」は、「小学生にどう教えるか」の連載第5回目。そこで私が提案したのが「セット・トス・ミニピッチ・ソフトボール(ベースボール)」でした。

 新春特別企画1月号において、「小学生にソフトボールをどう教えるか」について詳述した後、多くの指導者・研究者並びに読者から「小学生のためのソフトボールの試合について、具体的な用具とルールについて説明してほしい」という要望を頂いた。そこで、私はこの「セット・トス・ミニピッチ・ソフトボール」を紹介したのです。

 先ず、冒頭に、「小学生に『ソフトボールは楽しい』と言わせるためには、小学生に投げる、捕る、打つ、走る機会を与えることが大切である。小学生が、国際ルールやジュニアルールを採用すると、いわゆるファーストピッチやスローピッチのようなソフトボールは行えない。それは、投手がストライクを投げられない。打者がストライクに投げられたボールを打てない。また、内野手・外野手が正確に捕球・送球できない。といったことが考えられるからである。そこで、私は、小学生が国際ルールやジュニアルールを採用するファーストピッチやスローピッチの前段階の『ソフトボール』として、次のような「セット・トス・ミニピッチ」のソフトボールを提案する」と書きました。

 では、セット・トス・ミニピッチ・ソフトボールとは何なのか?

 「セット・ソフトボール」とは、ボールを本塁プレート上に置いた状態から、バットでボールを打ったり、蹴ったりするソフトボールのことである。本塁プレート上に「ボールをセット」した状態からボールを打つと、見送りがなくなり、空振りも極端に減少する。したがって、打者は打つ(蹴る)喜びを味わうことができ、加えて、打球は内野手・外野手方向へ頻繁に飛ぶようになる。内野手・外野手の捕球や送球の機会が大幅に増え、ファインプレーやエラーが多く、楽しいソフトボールが展開できるのである。

 「トス・ソフトボール」とは、投手が打者の近くから、柔らかいボール(ピッチャーライナーが危険のため)を、打者に打ちやすいボールをトス(投げる)するソフトボールのことである。(中略)「トス・ソフトボール」は、バットで打つだけでなく、打者が自分でボールを投げ上げ(トスする)、それを手で打つというハンド・ソフトボールも行える。(後略)

 「ミニピッチ・ソフトボール」とは、投手が、10メートル前後の位置から、打者に対して、自分の身長以上、その倍の高さ以内の空間へアーチを描いて投げる。「四球」のルールを採用し、投手はストライクやボールを投げ分ける。この「ミニピッチ・ソフトボール」では、打者が投球を打ちやすくするために、14インチの古くなった大きくて柔らかいボールか、3号球の柔らかいボールを使用する。(後略)

 守備者は11人と提案

 小学生のためのソフトボールでは、守備者は11名が望ましいと考える。ファーストピッチソフトボールや野球は9名、スローピッチ・ソフトボールでは10名それぞれが守備につく。内野手が、一塁手、二塁手、三塁手、遊撃手に分かれ、それぞれの守備位置に着いたとしても、その守備力は弱い。具体的に言うと、三塁手前や遊撃手前のゴロを捕って一塁に投げようとしている間に、打者走者は一塁を駆け抜けてしまう。10人目の野手であるショートフィルダーを二塁ベースの後方に位置させると外野守備が少し手薄になる。スローピッチにおけるショートフィルダーの役割は、「フェアー地域内ならどこで守備しても構わない」とある。これだと小学生にとっては、どの位置で守備して良いのか判断ができにくい。小学生に対しては、どの位置で守備し、どの辺までが自分の守備範囲かを明確にしなければならない。そこで、私は、9人守備、10人守備の前段階として、11人守備を提案する。11人の守備者は、投手、捕手、一塁手、二塁手、三塁手、遊撃手、第一外野手、第二外野手、第三外野手、第四外野手とする。(後略・守備位置の説明)

ここで、現在の日本式ティーボールの守備の原型が提案されたのでした。

そこで、次に名称ですが、「セット・ソフトボールⅠ」を「ティ・ソフトボール」。「セット・ソフトボールⅡ」を「フット・ソフトボール」。「トス・ソフトボールⅠ」をそのまま「トス・ソフトボール」、「トス・ソフトボールⅡ」を「ハンド・ソフトボール」。「ミニピッチ・ソフトボールⅠ」を「14インチ・ソフティ・ソフトボール」。「ミニピッチ・ソフトボールⅡ」を「3号ソフティ・ソフトボール」と命名しました。

 この後、私はナガセケンコーのボールの製作担当者と綿密な打合せを度々行い、14インチのソフトボールは、ゴムの中は「カポック」としました。このカポック(綿)は打者が打てばボールはだんだん柔らかくなる、環境にやさしいという二つの理由からです。加えて、「中空のボール」、分かり易く言うとゴムだけで製作されたボール(ゴムまりボール)の製造もお願いしました。これは、ティ・フット・ハンド・ミニピッチ等のソフトボールで使用するためです。

 ここで「グリーン・ソフトボール」を創作し、完成させたのです。それが後年、この「グリーン・ソフトボール」を参考にして日本ソフトボール協会は「学校ソフトボール」を世に出したのでした。

 この提案は、学校の先生方・ソフトボール・野球関係者に対して、インパクトがあったのです。しかし、授業時数の関係もあり、上記6種類の「ベースボール型球技」全てを小学校でプレーすることはできません。この中から一競技に絞り込むことが必要となってきたのでした。(だんだん日本式ティーボールが出来上がろうとしています)

 この提案の1年5ヵ月後に、「日本ティーボール協会」がスタートします。