3月16日「投手で最も大切なものは何」

 1,速球です。

 2,コントロールです。

 3,ボールの回転です。

私は、50年も前から、この議論はつまらないと思っていました。それはなぜか?「投手で最も大切なものは、打者に打たれないボールを投げること」だからです。

 私が、アメリカで野球とソフトボールの招待選手として2年半の間に350試合プレーしたことは、このコーナーで度々書きました。ソフトボールではトップリーグで投手を務めたことも多くあります。1969、1970、1971年の頃です。このころから、投手の投球は一球一球が「ムーブ」すること、これが打者にとって一番打ちにくい。これがアメリカの野球のメジャーリーグ、ソフトボールのトップリーグでは常識でした。

 今風にいうと、投手が160キロ投げても、そのボールが「ムーブ」しないと打たれます。アウトコース、インコースの低めと投げ分けてもそのボールが「ムーブ」しないと簡単に打てます。これが、アメリカでもう50年ほど、否もっと前から言われていた野球やソフトボールの常識です。でも、日本の野球関係者の多くは、いや速球だ、コントロールだ、ボールの回転だといい続けていました。私はしびれを切らして、1998年3月からベースボール・マガジン社発行の「ソフトボールマガジン」で「吉村式驚異のピッチング上達法」を2001年の12月まで、毎月書き続けました。1999年の3月号は「ムービング・ファーストボールの重要性」を書き翌月の4月号では、「今、なぜムービング・ファーストボールなのか」を、その後「変化球は70種類以上200種類投げられる」などを書き続けました。それを見た当時ベースボール・マガジン社出版編集部の長久保由治(現在全日本野球協会専務理事)氏が「先生、このダイジェスト版を一冊の本にしましょう」といって、2004年「変化球バイブル」として世に出したのです。ベースボール・マガジン社では10冊目でした。その冒頭「まえがき」で私は「投手がボールを投げるとき最も窮極的で不可欠な要素は、『打者に打たれないボールを投げること』に尽きる。と書き、第1章は、「変化球は70種類以上投げられる」でした。この本は結構多くの方にお読みいただいたようです。

 さて、昨日は、前田投手がレッドソックス戦に好投、よって今年のメジャー開幕戦で先発が決まったとのこと。良かったです。新聞報道やテレビによると彼は、昨年から速球系を40パーセントから20パーセント以下に減らし、得意のスライダーを軸にチェンジアップ等威力ある変化球を軸に投げるようになったとか。それは大正解です。多分あのパドレス、ダルビッシュ投手の影響を大きく受けているのでしょう。ダルビッシュが素晴らしいです。彼はメジャーの打者に打たれないスプリット、チェンジアップ、動く速球、カットボールらを投げています。速球は打たれることを誰よりも知っておられるようです。有原投手も最初の登板では、速球中心で打たれたようですが、昨日は「ツーシームが50cm動いていた」とトレビノ捕手のコメントです。良かったです。マリナーズの菊池投手もスライダーがよかったようです。

 ダルビッシュ、前田、有原、菊池皆いいですね。そうそう、忘れていました。昨日は投げていませんが、あの大谷投手がいますね。また彼を見るのが楽しみです。彼らは、皆「ムーブ」するボールを投げています。私はこれを言い続けて50年。

 投手がよくなればなるほど、打者はその打ちにくいボールを打とうとしますから、打者のレべルも上がります。これの繰り返しがメジャーです。

 さて、そんなメンドクサイこといいや、と思う人のためにあるのが、何を隠そう「ティーボール」です。いつでも、誰でも、楽しく打てます。野球やソフトボールのいわゆる両極(競技と楽しみ)をしっかり見届けるのは、とても楽しいことです。