1月27日「ロジャー・クレメンス、バリー・ボンズ殿堂入りならずに思うこと。復権の道はあるのか。」

 ロジャー・クレメンスとバリー・ボンズがアメリカの殿堂入りを果たせませんでした。殿堂入りするためには、全米野球記者協会による投票で75パーセントの得票率をとる必要があります。クレメンスは、39票でこれは65・2パーセント。ボンズは36票で、66・0パーセントでした。クレメンスは、サイヤング賞7回、354勝、4672奪三振。ボンズは、MLB最多本塁打762本、2934安打、 MVP7度。

 成績抜群、超有名人の二人が、何故殿堂に入れなかったのでしょうか。それは彼らの現役時代に、ステロイド(筋肉増強剤)等の薬物使用問題が取り沙汰されたからです。殿堂入りを賛成した記者は約66パーセント。反対は35パーセント。ESPN電子版は、「ボンズ氏落選なら、野球殿堂は失敗」(日刊スポーツ)と厳しい論調の記事を発表したようです。同時期に活躍した、あの大魔神佐々木主浩さんは、二人の落選を残念がった。と日刊スポーツで報道されています。

 私は、この決定にどうこう言う立場ではありませんが,筋肉を増強すると、投手や打者にはどのようなメリットがあるのか無いのか、以下に、少し書いてみます。

 投手でいうと、筋肉がしっかりつくと先ず強い力が加わります。その上、スピードが増します。腕の振りが早くなります。球速が増します。陸上競技の短距離の選手を見てください。彼らは、筋力を加えて、スピードを増すようにしています。速力が増します。記録が向上します。でも筋肉増強剤を服用するのはアウトです。今日では常識です。

 野球では、筋肉を増強させると、投手は確かに速いボールを投げることが可能になるでしょう。しかし、投手としてのもう一つの技術である「コントロール」や「動かす技術」はどうでしょうか? 私は、アメリカの野球で160キロを出す投手は、随分見ましたが、その全てが良い投手という訳ではありません。コントロールがなくて自滅する選手、投球が素直過ぎて、ボールが動かない投手は打たれます。このタイプの投手を随分多く見てきました。ソフトボールの投手も同じです。130キロ前後を投げる男子投手でも、ボールの「コントロール」が良くなければ四死球が多くなり、好投手になれません。投球が速いだけでは、打たれます。野球やソフトボールの投手は、「コントロール」と「ボールを動かす」技術はとても大切な武器の一つです。クレメンスには、力、スピードに加え、この「コントロール」と「ボールを動かす技術」の三拍子・四拍子が揃った大投手です。

 打者はどうか? 以前もここで書きましたが、アメリカでは、打者が強打するときに必要なのは、選球眼(バッティングアイ)・力(パワー)・集中力(コンセンチュレーション)の三つだと言います。筋肉を増強させると力(パワー)は増し、打球の飛距離は出ますが、他の二つはどうでしょうか。「選球眼」と「集中力」は、筋肉を増強させても向上しないでしょう。ホームラン打者は、投手が投げた打ちにくいボールを、ジャストミートさせねばなりません。もっと言うなら、あの小さな硬球のボールのほんの少し下を打ち、打球をフライボールにしなければホームランにはなりません。これは動体視力、集中力が優れている必要があります。スイングがゴルフスイングであろうが、ダウンスイングであろうが、レベルスイングであろうが、関係ありません。ボールを出来るだけ正確に見届けて打たねばホームランにはなりません。この「集中力」と「選球眼」が誰よりもあるのがボンズでした。彼も三拍子揃った大打者でした。

 しかし、大投手・大打者だから、野球の殿堂に入れるものではないということでしょう。社会性があり、優れた人間であること、スポーツマンシップに則っていつも爽やかにプレーをしていることなどが、アメリカの野球の殿堂に入るためには必要なのでしょう。

 大学のソフトボール部で長く指導してきた私にとっては「スポーツ教育」がとても大切と言い続けてきました。加えて、世界で勝つこと、日本で勝つこと、そして人間力を向上させること、これらを強調してきましたが、アメリカでもこの「優れた人間力が必要」と考えられているということです。

 2025年になると我らのイチローさんが、メジャーを引退されて10年、殿堂入りの有資格者になられますね。3年後が楽しみです。

 今日は、クレメンスという大投手。ボンズという大打者。まだ復権の道も残されているとのこと。人を選ぶ、評価する、これは日米問わず、どの国においても難しいことです。また時代と共に人の評価が変わるというのは、歴史上よくありますからね。二人がこの先どのような評価になるのか、変わるのか、変わらないのか。注目していきたいと思います。