4月12日 佐々木朗希投手。ダルビッシュ有投手。「変化球バイブル」の巻頭言:「投手は打者に打たれないボールを投げること」

 佐々木朗希投手の完全試合。昨日テレビのスポーツニュースでは、ほぼ特集扱いです。1日たった今日のスポーツ新聞も佐々木朗希投手が一面トップ。昨日の「理事長からのメッセージ」でも、この偉業は凄過ぎて今書けません、と記しました。野球を深く知っている人ほどこの「完全試合」が如何に素晴らしい快挙かが分かります。

 「完全試合」「1試合19奪三振」「13連続奪三振」。信じられない大記録です。

 打者27人中19奪三振、内野ゴロ5個、内野飛球1個、外野飛球2個に仕留めました。完璧すぎます。私は、コメントできません。

 ダルビッシュ有投手は、4日前の8日、6回までノーヒット・ノーランでした。これも桁外れの凄いこと。彼は確か、2013年テキサス・レンジャーズの時代、9回2死まで完全試合をしたことがあります。最後の27人目の打者にセンター前ヒットを打たれました。彼はその頃から、サイヤング賞に最も近い投手の一人でした。

 この二人が共通するのは、「打者に打たれないボールを投げ続けること」です。

 私は、1998年から2001年までの3年間、ソフトボールマガジン(ベースボールマガジン社発行)で、「吉村式驚異のピッチング上達法」を連載しました。その中で、「ムービングファーストボール」で「ライザー」「ドロップ」「カーブ」を投げる方法。そしてその後は、「変化球は70種類以上投げられる」を書き続けました。これはソフトボール界では結構反響がありました。

 このソフトボールマガジンを読んだ当時のベースボールマガジン社、出版部の責任者だった長久保由治氏が、私のところに来られて、これはぜひ単行本にしたい、野球関係者にも読ませたい、とおっしゃるのです。私は我が意を得たりです。即決で「お願いします」でした。それは「変化球バイブル」という書籍名になり、ソフトボール関係者だけでなく、野球関係者にも広く読まれました。ベストセラーにもなりました。

 その本を少しここで紹介します。

 先ずは、巻頭言:はじめに:「投手がボールを投げるとき最も窮極的で不可欠な要素は、『打者に打たれないボールを投げること』に尽きる。そのボールは剛速球でもなく、さまざまな変化球でもない。それでは、打たれないボールを投げるために、如何にすべきか、という疑問が生じる。私はこのことを長年熟慮し、思案してきたが、現時点における私自身の答えを示したものが本書である。」(後略)から始まります。

 目次:パート1.「変化球は70種類以上投げられる」1.打者に打たれない変化球を投げるために。2.ボールの握りを変える。3.ボールの回転で変化させる。4.手の中でボールを転がす、滑らす、切る。6.投球フォームを変える。7.複合的な変化球を投げよう。8.アメリカの名投手から学ぼう。パート2.「ムービング・ファーストボールの投げ方」1.ムービング・ファーストボール」の重要性。2.今なぜ、ムービング・ファーストボールか。3.『クリケット型』か『野球型』(ソフトボールの投手のみ参考となる)。4.誰がムービング・ファーストボールを投げられるか。5.速球をより速く。6.握りを変える。7.ほぼ同じフォームでライザー、ドロップを投げる。パート3.連続写真で学ぶ打者に打たれない変化球の投げ方。(後略)

 どうですか。この目次だけでも、数多くのヒントがあるでしょう。当時は、野球でもソフトボールでも、速球が如何に速いか。直速球。ボールの回転が縦回転でいいですね。このような理論が主流でした。私は、以前にも書きましたが、動かない速球は打ちやすい。投球が素直なボール、いわゆる直速球はなお打ちやすい。ボールの回転は、変化球を投げる時の参考にはなっても打者にとっての打ちにくいボールにはならない。と答えていました。

 それから約20年で、ダルビッシュ有投手の出現、そして一昨日の佐々木朗希投手の完全試合。ようやくこの理論を野球界で実践できる投手が出現したかと思うと、感無量です。

 佐々木朗希投手は、4月3日西武打線を相手に、163キロの剛速球を連発。投じた99球70球がストレート。そこで、サンデースポーツのコメンテーター落合博満氏は、「自分が打者の場合だと、佐々木投手の速球のみを待つ」とのコメントでした。私も速球だけだと打者は打てると、この欄で書きました。

 そこで一昨日の20歳の佐々木投手と18歳松川捕手とのバッテリーは、早速、105球中速球を64球のみにしました。それ以外は、フォークボール36球、それ以外はスライダー2とカーブ3です。160キロを超える速球を投げて、このように緩急、並びの横、縦の変化を付けられるとこれは打てません。この若いバッテリーは、落合さんのテレビ解説を観たか、監督、コーチ、先輩からこの事を聞いたのか、はたまた、自分自身の考えなのか。いずれにせよ、素晴らしい松川捕手のリードであり、佐々木投手の投球でした。

 今年、日本では、18歳と19歳と20歳の3学年が同時に成人を迎えます。この新成人出来過ぎです。この二人の若者どこまで今後成長するのか、めちゃくちゃ楽しみです。まさかこのお二人は私が約20年前に書いた「変化球バイブル」(2004年11月発行)を図書館かどこかで読んでた? 

 もし読んでたら、すぐにでも二人に「胡蝶蘭」でも届けますか。

 佐々木朗希投手の完全試合、ダルビッシュ有投手の6回ノーヒット・ノーランで、私が20年前に書いた「変化球バイブル」を思い出しました。皆さん、ぜひ上記「変化球バイブル」の本を図書館等でお読みください。投手、捕手、監督、コーチ皆さんにはきっと役立ちますよ。

 最後は、著者からのPRでした。