5月17日 長嶋さんと「荒川博野球塾」、川上さん、王さん

 昨日の巨人阪神戦に長嶋茂雄巨人終身名誉監督が東京ドームに行かれました。写真で見る限りではとてもお元気そうです。前日の試合が巨人阪神戦2000試合目。節目の試合にお元気なお姿を見るのはとても嬉しくなります。私たち野球全盛の頃、野球というと長嶋さん。稀有な存在でした。トップスター中のトップスター。今でいうと、イチローさんと大谷さんを合わせたような大スターです。当時日本人の好きなのは「巨人、大鵬、卵焼き」でした。その巨人は多くの場合長嶋さんを指していました。今は、息子さんがテレビで有名ですね。その数十倍凄い方です。このように言っても息子さんは笑って認めるしかないでしょう。

 日本ティーボール協会と長嶋さんとの接点は、一度だけです。それは我々日本ティーボール協会の有志が荒川博先生の「荒川博野球塾」開塾を決意した時、その会の発起人として長嶋さんはお祝いに駆けつけて下さいました。今日はこの話をしましょう。

 2001年1月20日、場所は椿山荘において、「荒川博野球塾」発足パーティーを開催しました。パーティーの前の「第8回日本ティーボールセミナー」では、荒川先生は「オリンピック銀メダルおめでとう」のコーナーで、日本のエースとして活躍した増渕まり子さんにエールを送って頂きました。それが終わった後、荒川先生と岩浪さんと私は、タクシーで雪が深々と降る中、早稲田大学14号館2階大ホールから椿山荘に向かいました。東京で雪が降るのはそして積もるのはとても珍しいことでした。

 会が始まり、出席者はと会場を見ると、総勢550人。荒川先生の偉大さが分かります。政界からは、海部俊樹先生と鳩山邦夫先生、野球関係会社からは、ベースボールマガジン社池田哲雄社長、ナガセケンコー長瀬二郎社長、プロ野球界からは、これが凄かったです。野球の神様川上哲治氏、長嶋茂雄氏、王貞治氏、近藤和彦氏、種茂雅之氏、毒島章一氏、町田行彦氏、小森光生氏、黒江透修氏、徳武定祐氏、末次利光氏、西園寺昭夫氏、吉田武司氏、尾崎行雄氏,池田重喜氏、谷澤健一氏、高橋直樹氏、田野倉利男氏、市原實氏、皆さんこの中で何人の名前が思い出されますか。私は勿論全てです。皆、それぞれの球団でエースであったり、3番、4番打者です。この人たち全てを紹介するとなると一週間かかります。そして大学教授も10人、これまた凄いです。分野が違うのにこれだけの数です。花束贈呈は甲にしきさん、それ以外にも早稲田大学、早実関係者、あの椿山荘に入りきれないほどのお客さんで埋まりました。

 そこで、最初にスピーチさせてもらったのは、私です。この塾の設立の理由、趣旨等をお話しさせていただきました。この時は、この会までの一週間、私はスピーチを繰り返し練習しました。大学の授業とは比較にならないほどの予習。録音してそれを聞く、それを直す、これの繰り返しでした。

 さてこの会の発起人は、海部先生、王さん、長嶋さんです。最初の発起人挨拶は、海部先生、早稲田の弁論部OB「海部の前に海部無し、海部の後に海部無し」と言われた演説の名手。いつお聞きしても素晴らしいです。「今日は、外では雪が降っています」から始まりました。「真っ白な環境の中で、今日できるこの野球塾を素晴らしいものに、日本の将来の子どもの心をここできちんと作り上げていくのです(略)」と。

 そして、二人目の発起人、長嶋茂雄さんのスピーチのキーワードだけを拾ってみましょう。「王選手のフラミンゴ打法完成の経緯を、一番近くで見ておりました」「荒川さんが塾長としてスポーツを推進するという役割の一端を担う形で発起人の名を連ねたことを私も大変光栄に思いますし、出来る限りの協力をする」「荒川さんの一番素晴らしいのは、指導力、情熱です。私は、広島、名古屋、大阪とことあるごとに、荒川さんの門を叩きながら、指導をやってもらいました」「荒川さんは、終始一貫変わらぬ愛情をもって、そして指導した」「奥様がきちんと隠れた内助の功で支えておられた。荒川さんの家にも時にはお伺いし練習の終わった後は、冬は暖かいもの、夏は冷たいジュース、いろいろ頂いたあのイメージいまだにきちんと残っています」「これからくれぐれもどうか一つ体調にはご自愛なさっていただいて、どうか一つ頑張っていただきたいと陰ながら大変応援しています」と。

 とても印象に残る見事なスピーチでした。

 その後は、お弟子さんの王貞治さん、そして、大トリは、荒川先生の恩師川上哲治先生。最後に、荒川博先生の「御礼の言葉」で締めくくられ、この会は終了しました。

 お土産の一つは、色紙によくお書きになった「一打一生」です。

 長嶋さんはこの会を中座して、同日同時間に開催された愛弟子、駒田さんの「2000本安打を達成を祝う会」に遅れて参加されました。荒川先生のこの会をより大切に考えてくださったこと、この会を仕掛けた人間としては、本当に感謝・感謝でした。

 荒川先生は、「長嶋は本当に素晴らしいスピーチをしてくれた」といつもおっしゃっていました。感謝の気持ちを強くお持ちでした。

 翌日の新聞には、「荒川塾発足パーティーONら550人参加」と報道され、その後この荒川博野球塾は、神宮球場のバッテングセンターで日常的に開かれました。また、我々日本ティーボール協会が主催する各種の大会では、上記発足記念の会に出席くださいましたプロ野球界OBの錚々たる方々が、子どもの野球指導、バッティング指導にお越し下さったのでした。

 今日は、久しぶりに長嶋さんを新聞で見たので、今から20年前の記憶を思い出しながら、荒川先生、王さん、長嶋さん、川上さんの勢ぞろいを書きました。

 この発足パーティーの後、このゲストのお三方が一堂にお集まりになった会はなかったと聞いています。